旅のエッセイ 『おとなふたりのバスク』 Vol.7 突如、ロゼ・ワインに魅せられて in Bilbao

それは、グッゲンハイム美術館に併設されたビストロ Guggenheim Bilbao でのことでした。ふつうは美術館併設のお店にあまり期待しませんが、「ここはその思い込みが覆されます!」と、あるガイドブックにあり、掲載のお料理はシンプルながら丁寧な感じがして、出発前にネット予約しました。 

事実、プリフィックス・ランチコースは「これで30€!」の充実した内容でした。前菜のグリーンソースのアスパラは、まろやかで素材の甘味が生きていたし、メインの白身魚のグリルは、ふっくらした身にバスクシーソルトが程よく効いていました。店内は天井が高く明るいモダンなインテリアで、壁添いの席はいい距離感で仕切られ、居心地よいコーナーになっています。店内はシニアのご夫妻やそのお仲間で集う席が多く、大いに飲んで、食べて、談笑しているのをみると、ああいうふうに、歳をとりたいなぁと思います。

さて、本題の「魅せられてしまったロゼ・ワイン」ですが、店員さんが、私達が注文したお料理と、きっと合うはずと勧めてくれたのが、リオハのロゼでした。一口飲んで、これがロゼ!?の驚きの出会いです。ドライですっきりした味わい、確かにどのお料理も-デザートの煮りんごのメレンゲブリュレまで-味わい引き立ち、楽しめました。その晩ホテルで調べたところ、リオハワインはスペインの代表的ワイン。有名なのは赤ワインで、品種の多くはちょっと耳慣れないテンプラリーニョ。フルーティーで心地よい口あたりが特徴。最近の国内外のロゼ需要に応えるべく、生産者も開発に努めているとありました。  

国外もロゼ需要が増えているという感覚が、日本にあるかというと疑問です。そこで、退職後、ブドウの栽培をしてワイナリーに製造を委託するNPOを立ち上げた友人に尋ねました。氏曰く、「ワインも世の流れと同様「ライト志向」でロゼ人気が高いけれど、日本には妙な固定概念があって、いいロゼがあんまり入ってこないんだ」という返事でした。 この「日本の固定概念」ですが、その昔ロゼはお花見の祝い酒目的で輸入され、「ロゼは甘い」というイメージが強く、ドライなロゼでも売れない⇒美味しいロゼは輸入されない⇒ロゼ需要は日本で育たない、という悪循環が未だにあるのだそうです。 

ワインに敷居の高さを感じる人は意外に多く、若者のアルコール離れも進む中で、気軽に、誰でも、どんな食事でも飲めるロゼをもっと楽しめるといいのに・・と思いました。私はすっかりロゼファンになり、旅行中も部屋食のお伴にし、今はネットショップで物色しています。

ヨーロッパai

ヨーロッパを旅して30年。建築やグルメ、ライフスタイルと幅広い分野で執筆。最近はエイジングライフを切り口にしたコンサルタントとしても活躍中 !

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