バスク旅行を決めた時から、スペインとフランスバスクの違いは何なのか、大きな関心事でした。時間の制約はあるけれど、なんとか両バスクを訪れて違いを発見して伝えたい、というのが旅の目的でした。なのに旅の終盤になってもその違いを話題にもできなかったのです。結局、もわっとしたまま帰国して悩みに悩んだ結果をVol.9とVol.10でお伝えします。
結論を先に言うと、そこに大きな違いはないとしました。どちらも確固たるバスク愛、家族愛、伝統を進化・継承するという信念のもと、技術を磨き、絶え間ない努力で今があると思えます。そこにそれぞれの感性、こだわりの差がある分、扱うモノの選別や表現(デザイン)が違うのだろうと解釈しました。
その事例として、「伝統菓子」を本編では取り上げます。フランスは、「ガトーバスク」と「マカロン」 スペインは「カロリーナ」とご存知「バスクチーズケーキ」です。その代表的お店と、特筆すべき「昔からのラッピング」もご紹介します。
ガトーバスクは、バターと砂糖と小麦粉を混ぜた生地に、ブラックチェリーのジャムか、アーモンド又はバニラのペストリー・クリームを詰めたものです。起源は漁師が海で食べる保存食〈パン〉だったようですが、バスク人がフランスにラム酒に漬けて持ち帰り、商品(スイーツ)にしたそうです。一見パイのようだけど他にない独特のサクッとした歯ごたえ、ジャムやクリームと合いまった味は絶妙です。
サン・ジェン・ド・リュズのメゾン・アダムのマカロンは、素朴なアーモンドプードルを使った焼き菓子です。実はこれ、イタリア発祥だったというのはともかく、私達が知るカラフルな生地2枚の間にクリームを挟んだマカロン・パリジェンヌとは見た目も食感も違います。17世紀フランス国王ルイ14世の婚礼の際、王家御用達パティシエのアダムが店自慢のマカロンを贈り物にして以来、その味を守り続けて300年、今も看板商品です。
一方、スペインの伝統菓子「カロリーナ」は、メレンゲがソフトクリームのように盛ってある誰もが目を停めるキュートな伝統菓子です。ビルバオのマルティナ・デ・スリカルダイの午後オープン行列に並んだのに、なんと私達の目の前で売り切れ!!翌朝買いに走りました。そこで目を奪われたのは、ラッピング。包装の手さばきも見事ながら、包のフォルムがなんとも可愛い♪手渡されたら子供のように上機嫌で家(宿)に戻ること間違いなしです。
最後はかのバスクチーズケーキ!YouTuber がサンセバで必ず取り上げるラ・ビーニャのそれは、ひたすら美味しいです♡♡ 書いているだけであのクリーミーで濃厚だけどしつこくない味が蘇ってきます。この店がレシピをオープンにしたことで、地元の銘菓になったという記事が、ほんとであってほしいです*
以下、GAZTA取材に同行しての後記
白金高輪のGAZTA(ガスタ)はバスクに行く前からのお気に入りです。代表取締役兼シェフパティシエの戸谷さんはラ・ビーニャでも学んだ方です。しかも日本であのラ・ヴィーニャの味と精神を再現し提供するためにチャレンジの連続だったこと、そのスタンスはGAZTAの前に立ち上げた系列店メゾンダーニで提供されているガトーバスクでも一貫していることを知りました。まさにバスク魂の伝道者 戸谷さんによって、日本にいながらにしてあのままのバスクスイーツを楽しめるのですから、感謝しかありません!
*戸谷シェフに、後で確認したところ、ラ・ビーニャがレシピをオープンにして地元の銘菓になったことは事実のようです。